不動産の購入では、頭金やローンで借りられる金額・年収についてなど、考慮すべきポイントがたくさんあります。不動産にかかる費用や相場を知り、適切な資金計画を立てましょう。
予算を検討する前に、何にどれくらい費用がかかるのか知っておく必要があります。不動産の購入において必要なお金について解説します。まず、不動産を購入するには、手付金や頭金、借入に必要な諸費用を支払わなくてはなりません。手付金や頭金は物件価格の10~20%が目安であり、諸費用は10%が目安です。なお、諸費用に含まれる費用の内訳には以下のものがあります。
金融機関によっては住宅ローンの借入の際に諸費用を見込んでいるところもあるので、自己資金を使いたくない方は、仮査定の段階で問い合わせておきましょう。
頭金とは、ローンで購入する契約申込みの際に代金の一部を先払いしておくお金のことです。頭金として支払った分は、ローン総額から差し引かれます。
頭金で支払う額によって毎月の返済額と、支払い総額が大きく変わってきますので、不動産購入の際には頭金をいくら支払えるかも考えておきましょう。
不動産を購入するときには、頭金のほかに住宅ローン手数料や登記費用、不動産取得税、仲介手数料がかかります。
これら諸費用が物件価格の5〜8%、頭金20%と考えると、合計で約30%を現金で用意する必要があります。物件価格が3000万円だとすると、900万円ほどの現金を準備するのが理想的といえます。
また契約時には頭金の一部を手付金として5〜10%ほど支払うのが一般的です。万が一買主がキャンセルする場合には、手付金は戻ってきません。
以前は頭金なしでの購入はできませんでしたが、現在では頭金ゼロでも購入できる物件は多くあります。頭金は数百万となるため、初期費用なしで住宅を購入できるのは大きなメリットです。
家賃や生活費の中から頭金を貯金するには何年もかかりますので、頭金ゼロにすれば貯まるまで待つ必要はありません。
頭金ゼロで購入し、これまでのように家賃の支出を住宅ローンに充てる、というのも家計としては妥当な戦略でしょう。
また物件価格100%の融資を金融機関から受けられたり、諸費用ローンという融資を使ったりすれば、手持ちの資金がなくても不動産購入が可能な場合があります。
さらに頭金ゼロにしておけば手元に現金を残せます。事故や天災など、万が一に備えるためにも現金を残せることはメリットとなるでしょう。
住宅ローンの利息は借入金に対してかかります。例えば頭金ゼロで4000万円の物件を購入した場合、4000万円に対して利息がかかるため月々の返済額およびトータルの利息負担が多くなります。
諸費用ローンも利用した場合、住宅ローンとは別に組むローンなので二重で返済していくこととなり、借入金利も増えてしまいます。
また頭金ゼロで購入した物件が将来値下がりした場合にリスクが大きくなるデメリットもあります。
例えば、住宅ローンを完済する前に何らかの事情で不動産を売却したいと思っても、物件が値下がりしてしまった場合には売却した金額ではローンが完済できず、支払いが残ってしまうリスクがあります。
総支払額を抑えるためには頭金は多いに越したことはありません。しかしまったく手元に現金を残さず頭金に充ててしまうと、引越し費用や家具の購入費用などが不足して、せっかくの新居での生活が満足のいかないものになってしまいます。
さらには子どもの教育費や事故・病気など、急な出費に備えることもできません。
資金に余裕があればできるだけ多く頭金を入れるのは良いのですが、ある程度の現金は生活の予備資金として手元に残しておくことをおすすめします。
住宅ローンの借入可能額は年収によって決まります。自身の借入額を知り、年収や家計の状況などを鑑みて借入金額を決めなくてはなりません。住宅ローンの借入可能額は、「年収倍率」「返済比率」から試算することができるので、計算してみてください。一般的に、借入可能額は年収の10倍程度が相場で、返済比率の相場は25%程度です。金融機関によって返済比率は異なるので、事前によく確認し、無理なく返せる金額に設定しましょう。
住宅を購入するにあたり、住宅購入代金以外にも登記費用や保険などの諸費用がかかります。登記には登記免許税がかかり、登記手続きをする際に納めます。登記とは土地や建物を自分のものだと主張し、取引を行う上で欠かせない法制度の一つであり、課税標準額にそれぞれ対象となる税率を乗じた金額がかかります。
一方で、ローン保険料は保証会社が変わりに返済してくれますが、契約を結ぶ際に費用がかかります。契約を結ぶと、万が一債務者が住宅ローンを返済出来なくなっても、保険会社が代わりに金融機関に返済してくれます。ただし、保険会社が代わりに返済をしても、債務者がその後の弁済を免れられるわけではありません。なお、ローン保険料の支払い方法としては、外枠方式と内枠方式とがあり、外枠方式は住宅ローンの契約時に一括で支払う方法で、内枠方式は金利に上乗せする方法です。
万が一の場合に備えて、貯蓄しておいて損はありません。というのも、いつ急な出費が必要になるか分からないからです。例えば、冠婚葬祭が重なったり、ご自身やご家族が病気になったりなど、人生に予期せぬ事態はつきものです。
また、子育てや教育、車の購入資金などにもお金がかかります。特に子育てには給食費や設備費などがかかり、小学校から中学校、高校、大学と進学するのに伴い、教育費もかさんできます。習い事や部活にもお金は必要です。それらにかかる費用を見越して、子どもに関わるイベントごとの費用は取っておいてください。
加えて、新居へ引っ越すにあたり、引っ越し費用もかかります。引っ越す距離や荷物の量によって費用は変わってきますが、不要となった家具や電化製品を処分するのにもお金がかかることを忘れてはいけません。
なお、家を購入すると追加費用が生じるケースもあるため注意です。オプションの追加や建材のグレードアップ、リフォームなど、購入してからまとまった金額が必要になる可能性があります。
ここまで述べてきたように、さまざまな理由で不動産の購入後に費用がかさむ可能性があるので、住宅の購入自体をゴールとして捉えるのではなく、購入後のことも視野に入れて貯蓄しておくのが大切です。
「予算=返せるローン+購入以外の金額+(貯金-万が一の貯蓄)」という式で、すべてを合算した金額を割り出せます。ここにこれまで考えてきた費用を当てはめて、予算をシミュレーションしてみてください。
家を買うときのポイントとして、返済負担率25%以内で借入金額を決めることが挙げられます。年収における1年間の住宅ローン返済額の割合を返済負担率といい、住宅ローンを組む際はこの返済負担率を何%にするかが鍵です。返済負担率が高いと将来的に返済が困難になる可能性が高いため、低めに設定するのがポイント。返済負担率を25%イカにしたい場合、月々の返済額は「年収×25%÷12ヶ月」で求められます。上記の計算式を元に支払額をシミュレーションしてみてください。
また、不動産購入にいくらかけられるかは個人差があり、家族構成や購入時の年齢、年収、ライフスタイルによって変わってきます。年収倍率を見てみると、年収の約10倍が相場です。年収から不動産を購入する予算を考えることもできますが、その際は相場と比較するだけでなく、無理なく完済できることも重視して考えてください。
返済負担率以外にも手元に残しておくべき自己資金があります。家を買った後に維持費がかかることを考慮する必要があるのです。例えば、固定資産税や都市計画税は毎年支払う義務があり、他にも地震保険や火災保険などの各種保険料、修繕費用などが生じます。マンションの場合は管理費や修繕積立金もプラスでかかるでしょう。
修繕費用は修繕内容によって変わってきますが、年間で40万円~50万円ほどかかるといわれています。住宅ローンの返済に加え、維持費がかかることを見越して資金計画を立てましょう。
不動産を購入する際のオーバーローンは、不動産の購入価格を超える金額を借り入れるというものです。3,000万円の不動産を購入するにあたって3,200万円借り入れる場合はオーバーローンに該当します。
通常、住宅ローンは住宅購入のために利用するものであり、金額が高額になることで低金利になっているのが特徴です。住宅購入以外で利用することができないようになっているのですが、住宅購入代金にプラスして諸費用まで含んだ形で融資を受けられるケースがあるのです。
オーバーローンに含むことができる諸費用は、住宅購入にかかる費用です。
ただし、金融機関によって何を含められるかが変わってきます。事前に問い合わせておくことが大切です。
諸費用が準備できずに購入を諦めることもあり得ますが、オーバーローンを利用すれば諸費用まで借り入れることで資金を用意できるため、買い逃しを防ぐことができます。諸費用は物件価格の3~9%になると言われており、数百万円が必要になることも珍しくありません。オーバーローンを利用すれば、自己資金がなくても好条件の物件を購入する可能性が高まるでしょう。
諸費用を借り入れることで、自己資金が減るのを防ぐことができます。自己資金は子供の教育費や病気やケガに対する備え、購入物件の修繕費に充てることができるでしょう。預貯金に余裕があれば、精神的にも負担が軽減されるはずです。
また、手元にある資金を住宅購入にほとんど充ててしまえば、いざお金が必要となったときに住宅ローンよりも金利の高い教育ローンやカードローンを利用せざるを得ないかもしれません。オーバーローンで借り入れた方が返済負担を軽減できるのもメリットです。
オーバーローンを利用すれば、投資資金を大きく借り入れることで、投資効果を高めるレバレッジ効果が期待できます。自己資金を少なくても住宅ローンを活用して不動産投資ができるでしょう。
借入金額が高くなるため、その分だけ毎月の返済額もアップしてしまいます。住宅ローンの返済期間はほかのローンと比較しても長期間になるため、完済まで返済できるかどうかしっかり考えなければいけません。返済開始時点から余裕のある返済額を考え、借入金額の設定をすることが大切です。
オーバーローンでは不動産価格よりも高い金額を借り入れているため、売却するときにローン残債を下回ることになり、手持ち資金で不足分を賄うことになってしまいます。引っ越しや離婚などで家を手放さなければいけないときにすぐに売却できないと困るかもしれません。
住宅ローンは低金利で利用できるのが魅力ですが、オーバーローンで諸費用を上乗せした借り入れを行うと金利が高く設定されることがあります。また、変動金利にしていると金利上昇が起こったときに借入額が大きい分だけ返済額が増えて返済が苦しくなるリスクもあるでしょう。
不動産購入の予算は個人の状況によって異なるため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。年収などから自分で算出することは可能ですが、固定資産税をはじめ、購入後に残しておくべき資産のことも考慮しなくてはなりません。そのため、資金計画や出費については専門家と一緒にシミュレーションするのがおすすめです。詳しくは不動産のプロに聞きましょう。