このページでは今後家を建てたり、購入したりする方のために耐震等級についてわかりやすくまとめました。耐震等級とは建物が地震にどのくらい強いかを示す一つの指標です。耐震等級のランクの違いや耐震基準との違いを理解して住まいの購入に役立ててください。
耐震等級とは、建物がどの程度地震に強いのかを示す住宅性能表示です。2002年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって定められました。建物の耐震性能1〜3の3つのランクに分け、数値が大きければ大きいほど耐震性能が高くなります。
各等級がどの程度の耐震性能なのかを見ていきましょう。
耐震等級1は、建築基準法で定められている耐震基準の最低限の耐震性能を満たしていて、震度6強から7相当に耐えうることを示す等級です。日本の法律では、建物を建てる際に建築基準法で決められている耐震基準を満たさなくてはなりません。
ただし、震度6強から7相当の地震に耐えられる耐震性であるものの、倒壊・崩壊しない程度の耐震性です。大地震が起きた場合は建物は大きな損傷を受ける可能性があり、修繕や住み替えが必要となるでしょう。
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の耐震性があることを示しています。震度6強から7相当の地震が起きた場合、一部修繕は必要になったとしても、そのまま住み続けられる可能性が高いです。
台風や地震の際に避難所となる場所は、耐震等級2以上を満たさなければなりません。耐震等級2は、長く住み続けられると国が認める長期優良物件に該当します。
最高ランクである耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震性があることを示しています。震度6強から7相当の地震に耐えうる強度があり、万が一大地震が起きても、わずかな損傷にとどまるとされている等級です。
災害時に重要な防災拠点・復興拠点となる警察署や消防署は、多くが耐震等級3を満たすような作りになっています。
住宅を含めて、建物を建てる際には建築基準法が適用されますが、地震への強さを示す耐震等級には品確法が適用されます。
一方、耐震基準は建築基準法と建築基準施行令によって定められています。同じような言葉ですが、耐震等級と耐震基準は根拠となる法律が異なるため、二つは連動していません。
耐震基準は1950年に制定された建築基準法で定められた人の命を守ることを目的としたものです。これまで大地震が起きるたびに見直しが行われ、現在の耐震基準は1981年に改正された法律によって定められており、「新耐震基準」と呼ばれています。
また、2000年にも建築基準法の改正が行われ、これは木造住宅に対して耐震基準が厳格となりました。そのため、1999年以前に建てられた木造住宅は、現行の耐震基準を満たしていない可能性が有ります。
ちなみに耐震等級は、人の命を守ることに加え、建物を守ることも目的としているものです。
耐震等級がどのように決まるのかを解説します。
住宅の基礎部分の種類はさまざまな種類があります。ベタ基礎と言われる構造は、地震対策に優れている構造です。
建物は軽い方が地震の揺れによる影響を受けにくく、耐震性が高くなると言われています。
建物を支える役割を果たす壁を耐力壁といいます。この耐力壁が多く、効果的に配置されているかどうかも耐震等級を左右します。
壁と繋がっている床は耐震性を左右するポイントです。吹き抜けの構造よりも、総2階建ての建物の方が耐震性は高くなります。
耐震等級で家を選ぶときのポイントを押さえておきましょう。
耐震等級3と耐震等級3相当の違いは、耐震等級の申請を行なっているかどうかです。申請はしていないものの、耐震等級3を満たす建物は耐震等級3相当になります。
免震は地震の揺れが建物に直接伝わらないように緩衝装置を設置し、建物のダメージを軽減する構造のことです。制震は建物の構造部に制御装置を設置することで、装置が地震の揺れを吸収します。耐震は壁や柱などを強化することで、地震による揺れに耐えるよう設計された構造のことです。
耐震等級が定められたのは2000年です。そのため、それ以前に建てられた建物は、耐震等級が不明の場合もあります。
法律で定められているのは、耐震等級1を満たすことです。耐震等級2以上にするかどうかの判断は家を建てる人に委ねられています。
耐震等級は、認定書、住宅性能評価書、耐震診断書で確認できます。
耐震等級2・3の住宅の場合、住宅性能評価機関で行われた審査に合格したことを示す認定書があるかどうかを確認しましょう。ただし、認定には費用がかかるため、耐震等級2・3の住宅でも認定書がないことがあります。耐震等級1は認定書がありません。
住宅性能評価書があれば、この書類を確認しましょう。ただし、住宅性能評価書の作成には費用がかかるため、作成されていない可能性もあります。
専門機関に依頼して耐震診断を受ければ、耐震等級がわかります。診断を受けるには費用がかかりますが、中古住宅を購入する場合で、認定書や住宅性能評価書がないのであれば、診断を受けた方が安心です。
購入する住宅によって確認するポイントが変わるので、以下を参考にしてください。
注文住宅の場合は、建築会社やハウスメーカーとの打ち合わせ段階で、耐震等級の取得を前提とした設計が可能かどうかを確認しましょう。
設計図面が完成したら、耐震等級の認定を受けるために必要な住宅性能評価書の作成や申請について相談します。
また、耐震等級3を目指す場合は、柱や梁、基礎などの構造強度が重要となるので、計画段階で詳細を確認することが大切です。
建売住宅では、すでに建物のプランや構造が決まっているため、販売担当者に「耐震等級」や「住宅性能評価書」の有無を確認するのが第一歩です。もし耐震等級2以上であれば、認定書が発行されている場合もありますが、費用の都合などから取得していないケースもあるので、設計図や構造計算書の開示を求めるとより安心できるでしょう。
建売住宅は早期契約が求められがちですが、契約前に耐震性のポイントをしっかりチェックしておくことが後悔を防ぐコツとなります。
新築マンションでは、販売パンフレットや建築概要書などに耐震性能が記載されることがあります。マンションの場合、全戸一括で住宅性能評価を取得しているケースもあるため、耐震等級に関する情報をまとめて確認しやすいです。
パンフレットなどで十分な情報が得られない場合は、販売担当者に問い合せ、建物の構造計算書や住宅性能評価書を見せてもらうとよいでしょう。
免震・制震構造を採用しているかどうかも一つの指標になります。
中古戸建ては、建築時期によって耐震基準が異なります。耐震等級制度導入以前に建てられた物件の場合、耐震等級が不明な場合が多いです。
まずは売主や仲介業者に、住宅性能評価書や認定書の有無を確認してみましょう。もし書類がない場合は、専門機関による耐震診断を受けることで、現状の耐震性能を把握できます。
診断結果をもとにリフォームや補強工事の予算を検討できるので、購入前に診断を済ませておくことが望ましいです
中古マンションも、築年数や大規模修繕の履歴によって耐震性能が変わってきます。新耐震基準が適用されているかどうかを確認し、必要に応じて管理組合や仲介業者から耐震診断の報告書や大規模修繕の計画書を取り寄せましょう。
マンションの場合、住戸単位の改修が難しいため、管理組合や全体の管理状況がしっかりしているかを見極めることが重要です。耐震等級の情報がない場合は、将来的に耐震改修が検討される見込みがあるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
以上のように、物件の種類によって耐震等級を調べる方法や入手する書類が異なります。購入前にしっかりと情報収集を行い、建物の強度やリフォームの必要性を把握することで、安全性の高い住まい選びができるでしょう。
戸建ての場合、購入後に耐震リフォームを行うことで耐震等級相当の性能を向上させることができます。マンションでは共用部分を含めた大規模改修が必要となるため、個人レベルでの耐震補強は現実的ではありません。ここでは、戸建てを中心に改修方法を紹介します。
建物全体の重心を軽くすることは、地震の揺れによる負担を減らす有効な手段です。とくに瓦屋根の場合、軽量な金属屋根やスレート屋根に葺き替えると、建物の重さが軽減され、耐震性向上につながります。
ただし、屋根材の変更には費用がかかるため、リフォーム会社と予算や耐久性をよく相談しましょう。
建物の構造上、壁量を増やすことや筋交いを追加することで、地震時の横揺れに対して強くなります。耐震診断を受ければ、建物のどの部分に壁や筋交いが不足しているかが明確になるため、適切な部分だけ補強できます。
リフォームの際は、生活動線との兼ね合いも考慮しながら、効率的に壁を配置するように計画するとよいでしょう。
壁の内部に補強金具や構造用合板を取り付けると、家の骨組み同士のつながりが強化し、地震時の変形を抑えられます。さらに、土台や柱、梁の接合部を専用の補強金具で固定する工事も効果的です。
これらの補強は、既存の壁や床を一部解体する必要があるため、工期や予算を十分に考慮して施工を依頼しましょう。
建物の土台となる基礎部分を補強することも、耐震等級を高める上で重要なポイントです。例えば、劣化が進んだコンクリート部分に補修材を注入したり、増し基礎工事を行って面積を広げたりする方法が考えられます。
また、既存の基礎と新設の基礎を一体化させる「抱き合わせ工法」などもあり、建物の揺れを大幅に抑えることができます。基礎補強は手間と費用がかかる工事ですが、安全性を長期的に保つための重要な投資といえます。
耐震改修工事は、建物の状態や施工内容によって大きく費用が異なるため、まずは専門家による診断を受け、見積もりを複数の業者から取り寄せると比較検討がしやすくなります。必要に応じて自治体の補助金制度なども活用し、無理のない範囲で耐震等級相当の性能向上を目指しましょう。